杉田敏先生から、「NHK実践ビジネス英語」2009年1月号を献本いただいた。
毎月の事ながら、恐縮である。
内容についてはまだ見ていないが、テキストをお贈りいただくととりあえずテキスト冒頭の「はじめに」は読むことにしているので、今日はそこから思ったことを。
杉田先生がオハイオ州立大学に留学したばかりのころ、あるスピーチで、州議会議員が、 "Ladies and gentlemen, extinguished guests … " というはじまりでスピーチをしたことがあったそうだ。
extinguished : 消火された
distinguished: きわだった、顕著な
ということで、明らかな誤用である。
周囲を見渡すと、何人かの人が下を向いて、必死に笑いをこらえていたそうだ。
彼は、そのほかにも、 Are you suspicious? (あなたは疑り深いか?)と聞かれて驚いたら実は superstitious (迷信深い)の誤用だったり、 What are you incinerating? (あなたは何を燃やしているんだ?)と聞かれたと思ったら実は insinuating (遠回しに言う)の間違いだったりという経験もしているとのこと。
ネイティブでも、この手の間違いはよくするものだ。
実際、日本語ネイティブの我々でも、集まった聴衆に「檄を飛ばす」と言ってみたり(「檄」は、遠方の人を呼び集めたり、遠方の人に意見表明したりするためのもので、本来はその場にいる人に対する用法としては正しくない)、2つのことがらを並置するとき、さいしょのほうには「たり」とつけたのに、あとのほうでは「たり」とつけなかったりといった具合に、実はしょっちゅう日本語でも間違いを起こしている。
あなたにも、きっと何度か誤用や文法的な誤りの経験はあるだろうと思う。
(この手の間違いは電車やバスの広告、スピーチ等でしょっちゅう見かけられるので、塾長は実はけっこう気になってしまう)
ネイティブでも完璧に言葉を運用することは難しい。
まして、ノンネイティブがある言葉を運用するときに、どうして完全主義的になる必要があるだろうか。
杉田敏先生は、"immature"と"premature"、"subsidiary"と"subsidy"、"eminent"と"imminent"を混同して失敗したことがあるという自身の経験を披露したうえで、「英米人でも同じようなことをやっているのです。完全主義を目指すと、口が重くなってしまいます。間違いを恐れずにしゃべって大いに恥をかくことも、英語の上達のプロセスにおいては大切です。」と、「NHK実践ビジネス英語」2009年1月号の「はじめに」をしめくくっている。
もしあなたが英語を扱うときに、自分の語学力が完全ではないということが気になってしまって書いたり発言したりというアウトプットを躊躇してしまうようであれば、ぜひこれからは、「日本人だって、完璧な日本語は扱えない。英米人だって、英語を完璧に扱うことは難しい。まして、ノンネイティブの自分が今完璧である必要なんてないじゃないか。」という方向に、考えをシフトしていただきたい。
ノンネイティブは、アウトプットを恐れてはいけない。
声に出し、文章にしない限り、あなたのアウトプットはゼロだ。しかし、どんなにひどいアウトプットだったとしても、それはゼロよりははるかに大きい価値がある。
そして、アウトプットに対する人からのフィードバックは、あなたの成長を大いに助けてくれる。ひどいアウトプットに対して笑われるようなことがあったとしても、その経験を経たあなたは、何のアウトプットもしなかったあなたよりも確実に成長しているのだから。
講座の内容や塾長が推奨する勉強法については、また機会を見て書いてみたい。