本事業の具体的な取組内容について、以下の順序で記述する。
【1. 申請事業の概要】
【2. 弊社の概要】
【3. 申請事業が解決したい課題】
【4. 課題の解決方法、申請事業の詳細】 ←今回の内容
【5. 本事業の社会的必要性と、技術的革新性】
【6. 対象となる市場】
【7. 将来の展望】
本事業は、オンライン講座受講生が24時間、いつでもどこでも、自分のレベルに合ったトレーニングをし、適切なフィードバックを受けられる仕組みを提供することを目的とする。そして、これにより、オンライン講座上での抽象的思考力、実務能力の評価と、これらの能力の向上を研修受講者が容易に実現できるようになることを目的とする。
本事業では、この目的のため、能力評価や能力開発を動的態度で行うことのできる、人工知能を搭載した能力評価、能力開発システムを開発する。
このシステムには、以下の機能を担わせる。
[A] 受講生が課題に取り組む様子の動画(パソコン画面上の変化)を解析する。
[B] この動画解析により、各々の受講生の、抽象的思考力や作業能力を複数項目にわたり判定する。
[C] [B]の結果に基づき、各々の受講生の能力強化により直結する、より好適な練習課題を案内する。
上記[A] – [B]について、以下に詳細を記述する。
[A] 受講生が課題に取り組む様子の動画(パソコン画面上の変化)を解析する。
システムは、受講生が課題に取り組む様子の動画を取得する。この動画の生成及び取得方法はいくつか考えられる。以下に、そのうちでも特に代表的で、現在有力と考えている方法2つを示す。
[方法1] 動画収録を受講生のパソコン内で行う方法:
[1-1] 受講生は、自身が所有するパソコンに動画キャプチャソフトをインストールする。
[1-2] 受講生は、その動画キャプチャソフトを使って自身がパソコン作業している様子を動画収録する。
[1-3] そして、受講生は、そのようにして収録された動画を弊社サーバに送信する。
[1-4] 弊社サーバは、受信した動画の解析を開始する。
[方法2] 動画収録を弊社サーバ内で行う方法:
[2-1] 弊社サーバに、エクセル等のオフィスソフトを有した仮想環境を構築する。
[2-2] 受講生は、その仮想環境にログインする。
[2-3] 弊社サーバは、その受講生がその仮想環境にログインすると、動画の収録を開始する。
[2-4] 受講生は、課題をその仮想環境上で解く。
[2-5] 受講生がログアウトすると、弊社サーバは、動画の収録を終了し、解析を開始する。
[方法1]のメリットは、システム構築にそれほど予算を要しないことである。
一方、[方法1]のデメリットは、受講生側に動画キャプチャソフトのインストールとその操作を行わせるという負担が発生すること。また、受講生側の不用意で、受講生が本来見せるつもりのなかった情報を、動画収録して、弊社サーバに送信してくる可能性があることである。後者については、特に注意する必要がある。
[方法2]のメリットは、受講生にとってより負担なく本サービスを利用できるということである。
一方、[方法2]のデメリットは、弊社サーバ側の仕組みに作り込みが必要になることである。
[B] この動画解析により、各々の受講生の、抽象的思考力や作業能力を複数項目にわたり判定する。
解析された動画により、受講生がどのようなタイミングでどのような問題でつまずいたのかということが明らかになる。具体的には、例えば、図2-図4のケースであれば、以下のような点が評価項目になるであろう。
※以下のすべて、熟練した講師であれば、動画上でのマウスカーソルの動きや画面切り替えの様子から、容易に判定することができる
※上の項目には、抽象的思考力を評価する項目もあれば、実務上の作業能力を評価する項目もある。
そのどちらも高度な抽象的思考力の結晶たるエクセルマクロを使ったプログラムを書き上げる際に必要なスキルだということに改めて留意いただきたい。
パソコン作業の様子には、その作業によって得られる成果物以上に、作業をしている担当者の抽象思考力と実務能力が現れる。
また、パソコン作業を行う際の具体的なパソコン操作方法をマウス、キーボードショートカット操作レベルまで落とし込んで徹底的に指導することにより、指導を受けた者の抽象思考力と実務能力を向上させることができる。
上に挙げた評価項目の例は、そのような視点から重要と考えられる評価項目の一例である。
スキルの低い受講生は、上に挙げた項目の多くで問題を抱えている。
そこで、「動画の〇分〇秒、○○の操作の段階で××の改善点があります」といったレベルで、動画内での動きのおかしいところの一挙一動に対して評価を行い、その評価内容を受講生に通知するための準備を行う。
上述の準備を行った後、受講生に対し、その解析結果を通知する。その際には、個別の評価項目に対する評価以外にも、総合評価のようなメッセージを加えても良い。ただし、受講生の現段階での能力やストレスレベルも考慮し、この判定内容もすべてを開示せず、受講生が一度に通知されても受け入れられる程度のボリュームの範囲で、極めて重要なものだけを通知するといったことも考えられる。
[C] [B]の結果に基づき、各々の受講生の能力強化により直結する、より好適な練習課題を案内する。
上記受講生に対する通知には、各能力強化項目に関連付けられた弊社オンライン講座内の講座へのリンクを含める。これにより、オンライン講座受講生が24時間、いつでもどこでも、自分のレベルに合ったトレーニングをし、適切なフィードバックを受けられる仕組みを提供できる。
このシステムには、人工知能を搭載する。この人工知能には、受講生の抽象的思考力や作業能力を判定し、適切なアドバイスをするために必要な知見を学習させる。
また、このようなアドバイスを受講生に対し行う中で人工知能自体が自己学習を進め、あたかも人間の講師が経験を積むように、時間が経てば経つほどより精度の高いアドバイスをできるようにもする。
このようにすることで、弊社代表者のような経験豊かな講師が人力で対応しなくても自動的に受講生が適切なフィードバックを受け成長できる仕組みを実現できる。また、そのような仕組みが自動的に成長する仕組みを作ることができる。
弊社は、この人工知能を搭載したシステムにより実現されるサービス全体を設計・開発する。
人工知能を有するシステムの開発は外部に委託する。
人工知能が行う能力評価の基準設定には、弊社の代表者(元日本IBM社内講師で、15年の講師歴にわたり、抽象的思考力、実務能力開発のための研修を実施してきた)が実務で培った知見を用いる。
なお、パソコン作業の様子を収録した動画を活用することは、人工知能によって抽象的思考力、実務能力の評価とこれら能力の向上を支援するための手段として特に好ましい。
なぜなら、「パソコン作業」には、以下の特徴があるからである。
[1] 「パソコンを使う」という制約条件がある。
[2] 試行錯誤や作業の具体的な様を明確に観察でき、その解析だけで能力を十分に評価しうる。
[3] 人工知能との相性が良い。
[4] パソコン作業能力自体、実務能力に直接関係するスキルである。
[1] – [3]は、ITシステム、とりわけ人工知能を使って能力開発をするときに、システム側に必要な要件が少なくなるという意味で好適である。
[4]は、受講生にとって、熱心に取り組む価値がある課題だという点で好適である。
また、人工知能を使ってこのサービスを実装するに当たっての弊社の利点は以下である。
[5] エクセル等のパソコンスキルを学ぶためのオンライン講座や演習問題がすでに豊富にあること。
[6] スキルアップに積極的な受講生のリストがすでに25,000名分あること。
[5] – [6]は、人工知能がその能力を高めるための自己学習の機会が豊富であるという点で好適である。
※さらに言えば、人工知能によって解析をするのであれば、受講生に提供する課題には、個人の創造性によって最終成果物の品質に大きな影響が出ないものがより好適である。具体的には、「フォトショップを使った広告画像作成」、「パワーポイントを使ったプレゼンテーション作成」、「本事業計画のようなワードを使った文章作成」といったものは評価が難しい。
一方、「エクセル関数を組み合わせて所定の計算をさせる」、図2-図4に示したような「エクセルマクロで所定の機能を有したプログラムを書かせる」といった課題は好適であろう。