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「言葉」と「意味」と「経験」

2010年9月25日
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塾長の友人に、西日暮里で中国語・韓国語通訳案内士(いわゆる、「通訳ガイド」の育成道場をされている高田直志さんという方がいる。

日本の神話の国、出雲の農家に生まれ育ち、18才で大学進学のために大阪に行った彼は、その後、機会を得て、「中国語と韓国語がバイリンガル状態だった」という、中国は延辺朝鮮族自治州に行く。

そこで中国語と韓国語を覚えて以来、「東亜の相互理解に少しでも寄与して行くべく」、通訳ガイドの養成に専念されている。

彼の奥さんは中国の方で、その彼女もやはり通訳ガイドだ。

日本でも特殊な地域に生まれ、東亜圏の様々な文化に肌で触れてきた高田さんらしい、骨のある講義をしていることと思う。

実際、2007年度には、個人で指導しているにも関わらず、難関と言われる通訳ガイド試験で、実に24名もの通訳ガイドを輩出されたそうだ。

道場は、以前は、塾長も住んでいたことのある東京小金井にあった。

そのころには、塾長も彼の道場に遊びに行ったことがある。

教室は、高田さんの住まいとしている二階建ての一軒家の一階にある居間をまるまる改造して塾の体裁にしたところで、夕方に訪問した塾長は、そこで酒を交わしながら、語学や異文化交流の話で花を咲かせた。

ところで、高田さんの今日のブログで、おもしろいエントリーがあったので紹介したい。

> 語彙増強に関しては、基本的には「単語帳」らしきものを丸暗記することだけはお勧めできない。

> それでは本当に身に付かない上、覚えた語彙が実際に使用されているか分からないからだ。

> 常日頃から感じるのは、「言葉」と「意味」と「経験」は不可分であるということだ。

> つまり、読書やテレビ等の視聴を含んだ「経験」なしに、「言葉」の本当の「意味」を理解することは非常に難しいということだ。

> だから語彙増強はあくまでもオーソドックスに、自分が読んだり聞いたりして「経験」したものだけを、単語帳に書き写し、覚えていくべきである。

http://blog.alc.co.jp/blog/3302642/139100

塾長も、この考え方には非常に共感できる。

塾長は、著書の中で、短期間で語い力を強化する方法として、「単語集でたくさんページをめくる」というステップを「乱読する」というステップ、「乱読した際に出てきた単語を、単語集の中でチェックしていく」というステップを交互に入れていくということを推奨している。

やっていることのエッセンスはまったく共通だ。

高田さんの言う「経験」が、「乱読する」にあたる。「単語帳に書き写し、覚えていく」のところは、英語の場合は幸いにして学習者それぞれにあわせて適切なものを推薦できるくらいに教材が溢れているので「単語集」で代用しているが、その部分が多少異なるだけで、やろうとしていることの方向性は結局同じである。その代わり、自分で作る単語集に比して「経験」との関連づけが弱くなる傾向があるので、それを補うため、「乱読した際に出てきた単語を、単語集の中でチェックしていく」というステップを追加し、「意味」と「経験」を強く結びつけている。

言葉は、意味だけでは自分の中で生きたものにはならない。

経験と結びつくことで、その言葉に息吹が吹き込まれる。そして、はじめて、その言葉はその人自身と一体化していく。

つまり、「言葉」には、「意味」と「経験」の両方が必要ということだ。

塾長のまわりに、よく、「単語集を見ているけどぜんぜん覚えられない」という人がいる。あなたのまわりにもいるかもしれないが、塾長の見る限り、そういう人は、圧倒的に、「経験」が不足している。

紹介したブログの中では、そのあと続けて、インターネット上で使えるお勧めのリーディング、リスニング用教材も紹介されているので、ぜひ見ていただきたい。

その他にも、高田さんのブログには、日中韓という異文化間での価値観の違い、在日韓国人と在韓の韓国人のメンタリティの違い、指導にあたって感じた雑感など、見どころが満載だ。

日頃から「塾長ブログが気になる」というような方には、一読されることをお勧めしたい。

http://blog.alc.co.jp/blog/3302642/139100

高田さんの理念は、「高い志をもったガイド」を育成することだそうだ。

> 「高い志をもったガイド」とは、 … 彼我の違いを認識し、それを公平に見つめたうえで、日本も中韓と同じく東洋の文明・文化を分かち合った兄弟姉妹であることを … 。そして … 明治維新以来、それぞれ不信に陥った東亜世界を再び一つにする人材こそが「高い志をもったガイド」だと考えます。

http://blog.alc.co.jp/blog/3302642/profile

さすが、骨のある人は言うことが違う。こういう人と話しているときは、たまらなく楽しい。

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