風下は追いつくチャンス、風上は追いぬくチャンス
実は、塾長は、大学時代、ヨット部に在籍していたことがあった。
結局2年もやらないうちに辞めてしまったのだが、ヨットは、風、他艇の動きというものを予測しながら最適なルートを選んでコースを縫って走っていくという大変頭を使うスポーツで、塾長は、この短い期間の間に、戦略というものについてかなり学ばせてもらうことができた。
ヨットの格言に、「風下は追いつくチャンス、風上は追いぬくチャンス」というものがある。
ヨットは、基本的に風の力だけで進む。
風下に向かって進むときは、前にいる船の風上に自分の船が来るようなコースを選べば相手の船の速度を落とすことができる。その分追いつきやすい。
風上に向かって進むときは、ヨットは風の向きに対して45°の角度までしか前に進めないようになっているので、各々の船がジグザグなコースを取らなければならなくなる。
イメージとしては、風下の出発点から風上の目標地点までの間に、その2点を対角線とする正方形のエリアがあって、風下の出発点から各自好きなコースをジグザグに進みながら風上のゴールに向かっていくという感じだ。
そのとき、先に進む相手が海域の右を選んだとして、それよりもよい風が左側に来るようだったら、チャンスである。
自分は、その左側に吹く風に一気乗ってしまえば、相手の船よりもゴールに近いところに進むことができる。
そんなイメージだ。
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休日は追いつくチャンス、平日は追いぬくチャンス
「追いつくチャンス」「追いぬくチャンス」
こうして、同じように流れていく時間を区切って考えてみることは、とても興味深い。
塾長が思うに、仕事のための勉強においては、「休日は追いつくチャンス、平日は追いぬくチャンス」だと言える。
拙著「英語嫌いの東大卒が教える私の英語学習法」
にも書いたとおり、新しいことを学ぶためには、まとまった時間と集中力、それに、そのことに集中できるための環境が必要だ。
そのためのいちばん理想的な体制は、これから学びたいことを、自分の仕事にしてしまうことである。
そうすれば、あなたは会社にいる時間を自由に活用し、誰にも邪魔されずに、日中の集中力をすべてあなたが学びたいことに注ぐことができる。おまけに、給料までもらえることになる。こんなにいいことはない。
しかし、普段経験していない仕事について、いきなり「やりたいからやらせてくれ」と言って上司の承認を得るのは、非常に難しい。
その仕事についてまったく予備知識のないメンバーに任せてしまうよりも、あなたには他の得意な仕事をしてもらい、あなたが経験したいその仕事は、すでにそれをデキるメンバーに任せることにしたほうが上司の目から見れば合理的だからだ。
結果、日常生活を送りながら新しいスキルを身につけていくのは、かなり困難なことになる。
だが、休日は違う。
休日に入ってしまえば、あなたは自分の時間を自由に活用することができる。誰にも邪魔されずに、集中力を完全に注ぎ込んで新しい学びをすることができる。
仕事としてそれをやるときとの差は、給料が出るかでないかくらいなものだ。
そして、ひとたび集中してスキルを身につけてしまえば。
今度は「やりたいからやらせてくれ」と言えば、あなたの上司は必要に応じてチャンスをくれるだろう。
そうしたら、その仕事をしていく中で、デキる人からいろいろとスキルを盗み、実務上自分に足りない部分を一気に補っていくことができる。
「会社にいる時間を活用し、誰にも邪魔されずに、集中して、給料をもらいながら」である。
つまり、休日を活用すれば、人に追いつくことができる。平日の仕事を通じて、追いついた相手を追いぬくことができる。
これはまさに、「休日は追いつくチャンス、平日は追いぬくチャンス」ということではないだろうか?
特に、長期休暇はすばらしい。
通常の土日の休日は、平日の肉体的な疲れを取ること、精神的にリフレッシュすることのためにある程度の時間を取られてしまう。
そのため、まとまった時間は確保しにくい。
ところが、長期休暇となれば話は異なる。
長期休暇は、その前半でしっかりと休みを取れれば、残り何日も連続して、自分のスキルアップのための時間を確保できるのである。
塾長自身、「スペイン語を覚えたのは、長期に旅行していた南米滞在中」「英語の力がグッとついたのは、入院中」「統計・マーケティングリサーチのスキルを身につけたのは、失業中」と、それまでの自分の持たない軸を手に入れたのは、長期休暇中のことだった。
そして、日常生活や仕事に適用していく中で、その力を定着させていった。
そのリターンはその後何年も続き、今も毎日を実りあるものにしてくれている。
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塾長は、ここであなたにひとつの提案をしてみたい。
仕事のための準備と割り切って、貴重な何日かを、思い切って勉強にあててしまってはどうだろうか。
勉強をして割に合わないということはない。
その思い切りは、必ずあなたにとって大きなリターンとなって返ってくることだろう。