よく、「あなたがよく交流している5人の人間の年収を言ってみろ。その平均が、君の年収だ」などと言われる。
この傾向は概ね正しいのだが、別にそれは年収に限ったことではない。
人に対する影響力、読書量、勉強の要領の良さ、進取の気性……。
多くの要素について、まったくこれと同じことが言えるだろう。
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ところで、アメリカにケン・ウィルバーという思想家がいて、彼が面白いことを言っている。
曰く、『どの社会にも「文化的重心」と言えるキーとなる意識のレベルがあり、文化的重心には、そのレベルより下の人を上に引き上げ、上にいる人を引きずり下ろす作用がある。』
「社会」というとちょっと堅苦しいが、要は、ここで言う社会とは、「人の集まり」のことである。
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何のことかすぐにはピンと来ない人のために、会社生活を例に挙げてみよう。
会社には優秀なヤツもいる、極めて愚鈍なヤツもいる。愚鈍なヤツもいる。極めて優秀なヤツもいる。そして、極めて優秀なヤツもいる。
そんな集団が、「会社」という社会を構成している。
さてここで。
会社は、愚鈍なヤツをまあまあ人並みに持って行くため、彼らに、高い基準を持たせたり、教育を施したりする。
つまり、レベルが下の人を上に引き上げる機能を果たす。
一方、極めて優秀なヤツにとってみると、非常に居心地が悪い。
なにしろ、際だった能力を気が済むまで発揮するとロクなことがないし(あまり容赦しないでいると、宇宙人扱いされたり、イヤミを言われたり、拒絶されたりして息苦しくなる)、要求水準が低いので、適当なところで妥協しやすくなる。
この特徴は要するに、上にいる人を引きずり下ろす用に作用している。
つまり、「会社の人たち」という集団の中で「ま、普通ならこんなもんでしょ」という共通認識があって、それより上の人も下の人も、なるべくそのレベルに近づくように持っていかれるのだ。
その「ま、普通ならこんなもんでしょという共通認識」のことを、ケン・ウィルバーは、「文化的重心」と呼んでいるのである。
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ということで、今日の本題。
あなたは、「これからものすごく上達したい」と思っていることについて情報を交換するための、どんな「社会」に属しているだろうか?
そして、その社会の「文化的重心」はどこで、その重心より、あなたは上にいるだろうか?ちょうど重心くらいだろうか?それとも、重心よりかなり下に位置しているだろうか?
もしあなたが「重心より比較的上」という以上のところにいるのならば。
別に、その集まりとの縁は切らなくても良いのだが、それとは別な「人の集まり」にも参加することをお勧めする。
ここで、塾長が理想的と考えるのは、以下の条件を満たす集まりだ。
あなたがこれから捕まえたいと思っている、今のあなたではギリギリ届かないような目標を達成した人が多くいる
その「集まり」の人たちが、「進んで代償を払ってでも成長したい」と考えている
今のあなたでは「文化的重心」にちょっと及ばないかもしれないくらいのところ
●まず1番目。「今のあなたではギリギリ届かないような目標を達成した人が多くいるところ」だというのはとても大事な要素だ。
目標を達成するためのいちばん簡単な方法は、他人の経験を使うことだ。そして、十分な経験を持ったたくさんの人と自由に交流できるようになれば、あなたの目標達成はより容易になるだろう。
●次に2番目。「進んで代償を払ってでも成長したい」と考えている人が多くいる集まりであることも大事だ。
そういうところにいる人たちは放っておいても成長していく。そういう人たちの集団にいるということは、それだけで成長のエスカレーターに乗っているようなものだ。彼らがエスカレーターを動かすために払う汗と労力は、そのままついでにあなたも引き上げてくれるだろう(w
●そして3番目だが、エスカレーターに乗せてもらうためには、もちろん、あなた自身もその集まりに対して貢献しなくてはならない。
(だから、あなたも実はそのエスカレーターを動かすために汗と労力を支払わなければならないのだ (^^; )
あなたの位置は、その集団の中で、「文化的重心」よりも下かもしれない。
だが、気にすることはない。そういう状態にあっても、集団に対する貢献の意欲があれば、いろいろと工夫して何かできるものだ。
(というか、そうして創意工夫している間あなたの意識レベルが一時的にでも「文化的重心」よりも高まっているから、その集団に対して貢献ができるのである)
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「文化的重心」という概念は、人間の成長や社会のあり方についての考え方を整理するのに非常に役立つのだが、どういうわけだか、検索してもあまりヒットしない。
今調べてみたら、Googleで52,100件程度だった。しかもその中で、完全一致のものはほとんどなさそうだ。
興味のある方には、天外伺朗先生の「マネジメント革命」を読まれることをお勧めしたい。
CD、AIBOを開発した元ソニー取締役にしてスピリチュアル系作家という異色の人が、「文化的重心」の話を土台にマネジメントを語っている面白い本だ。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062135825/konesweb0f-22/
マネジメント本なのだが、マネジメントのあり方についての唯物論的な話よりも、社会の成長を人間の成長となぞらえ、マネジメントは、次世代的な抜きんでて高度な人格を持って、現代社会のスタンダードに位置する人を扱うべきであるといった主張とその根拠が面白かった。
そのベースになっているのは、やはり「文化的重心」についての考え方だ。
人間社会の成長にあわせて、どういう価値観がその時代々々の「文化的重心」だったのか、それによって、どういう人たちが利益を得、どういう人たちが不当に迫害されてきたのかなどなど、歴史について別の角度から学ぶためにもおもしろいと思う。